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都築由浩
SFやらミステリやらホラーやらをライトノベルジャンルで書いている作家。
コミック原作・編集デザインなどその他さまざまな職業を兼業する。
クルマ・R/Cカー・自転車・ホビーロボットなど多趣味で、それらの道具や仕事の資料が散らばる自室が常にゴミ箱のような様相を呈していることから、巻末に『9畳のゴミ箱より』と記する。
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2008(C) Yoshihiro Tsuduki
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『ワンダフル・ライフ』と『カンブリア紀の怪物たち』
 小説のネタ本として読んだ本ですが、非常に興味深かったので、古生物学の本を紹介します。
『ワンダフル・ライフ?バージェス頁岩と生物進化の物語』スティーヴン・ジェイ グールド (ハヤカワ文庫NF)
『カンブリア紀の怪物たち?進化はなぜ大爆発したか 』サイモン・コンウェイ・モリス (講談社現代新書)
「カンブリア紀の大爆発」あるいはその時代の軟体動物の化石が多数出土した「バージェス頁岩」については、非常に興味深い生態系ですのでそれだけでSF小説のネタにできるほどなのです。特に、地球外生命体の生態系を考えるときにとても参考になるので、私にとっては欠かせない勉強なのですよ。

 そんな資料の中でもこの二冊はかなり新しいデータを元に書かれており、しかも進化論に関して対立する仮説に基づいて書かれた相互補完関係にある本といっていいでしょう。
 できれば二冊併読されることをおすすめします。ただし、続き▽に書いたことには注意して。


 正直な話、上で紹介した本、特に先の『ワンダフル・ライフ』には酷い目にあわされました。 
 もちろん「バージェス頁岩と生物進化」と銘打っている以上、カンブリア紀の動物化石についての本ではあるのですが、 全5章あるうち、期待している内容に詳しく触れているのは第3章全体と第5章のごく一部のみ。(ただし3章が量的には本書のほぼ半分を占めているので、その部分の資料的な価値は大きいのですが)
 それ以外の部分は『バージェス頁岩発見に伴う伝説と実際』『バージェス動物群が発見当初どう見られていたか/なぜそんな間違いが発生したか』『バージェス頁岩発見者であるウォルコットの人物紹介』、そして大部分がグールドの自説である『生命進化の多様性の下ぶくれ分布』に当てられているのです。

 特に第1章と第4章が、進化系統図に関するグールドの説をひたすら繰り返し述べるだけに終始してしまってるので、私にはダメでした。その仮説が正しいとか間違ってるとかじゃなく、同じ事を何度も繰り返してるだけなので冗長で読むのがイヤになる。
 ですのでこの本を読まれる方は、まず第3章と第5章を読んで(この二つの章にも第1章や第4章でしつこく出てくるグールドの進化論仮説は何度か登場します)、それから気が向いたら他の章もお読みになるといいでしょう。
 カンブリア紀の奇妙奇天烈な動物について、最新の研究に基づいた復元イラストが多数収録されており、想像力を刺激してくれます。
 ただし「バージェス頁岩動物群を紹介する」以外の意図を強く感じる本ですので、この本単体では公平な資料とは言えない感じがします。それを補完するために、もう一冊のコンウェイ・モリスの『カンブリア紀の怪物たち』を併せて読むのがおすすめ。

 この本の著者のコンウェイ・モリスは『ワンダフル・ライフ』にも登場するバージェス頁岩動物群の研究者本人。おそらくグールドの本に満足できなかったために、自分で本を書いたものと思われます。
 前にも書いたとおり、グールドの本は「バージェス頁岩動物群の本」というよりは、「バージェス頁岩動物群を根拠にして進化論に関する自説を展開する本」になっているので、自分の研究結果を利用された形になったモリスが不満に思うのも無理からぬこと。
 事実、本書では後半の第5章から第7章までにわたってグールド流の「下ぶくれ」進化論を否定する材料が挙げられていて、明らかにこちらの方が学会では主流の考え方であるように思えます。

 ただ、本書には化石そのものの写真はいっぱいあるのだけれど、スケッチが少なすぎる。この点ではグールドの本の方が素人目にカンブリア紀の動物の復元された姿(活躍想像図と言ってもいい)がわかりやすいです。
 対立する両論を併読する意味でも、やはりこの本とグールドの本は相互補完的な「両方を読むべき本」と言うことになると思います。
| https://blog.tsuduki.com/index.php?e=199 |
| | 10:18 AM | comments (0) | trackback (x) |

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