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都築由浩
SFやらミステリやらホラーやらをライトノベルジャンルで書いている作家。
コミック原作・編集デザインなどその他さまざまな職業を兼業する。
クルマ・R/Cカー・自転車・ホビーロボットなど多趣味で、それらの道具や仕事の資料が散らばる自室が常にゴミ箱のような様相を呈していることから、巻末に『9畳のゴミ箱より』と記する。
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2008(C) Yoshihiro Tsuduki
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映画『インセプション』
『インセプション』を観てきました。

 難解だという人、「難解なんてことはない。今年度最高の映画」と絶賛する人、いろいろいますが、共通するのは比較作品に押井守の名前が出ること。
押井信者の私が見にいかないわけにはいきません。

 ここから先、ネタバレを含みますので、見たくない方はご遠慮下さい。


 私の感想を言うなら「構造は複雑だけど難解というほどじゃない。十分楽しめるし、面白かった。でも、クリエイターの勉強のつもりで観るなら、ガチのSF作家以外はまるで参考にならないな」というところ。
 先に書いた感想で「難解というほどじゃない」というのは、シナリオと画面作りがとんでもなく上手いから言えることで、なかなかこれを参考に多層構造世界の作品を自分でも……というのは難しいでしょう。

 映画は『夢を共有することができる近未来、夢の中で、その夢を見ている人のアイデアを盗むことができる主人公が、逆に「夢の中で特定個人にある考えを植えつけろ」と依頼される』という設定。
『七人の侍』的なチーム探しから、標的の特定個人の調査、計画の実行とストーリーが進み、計画成功の直前で計算外のことが起こって……という、ハリウッド映画のマニュアル通りに展開します。
「たとえ夢の中で死んでも、現実では目覚めるだけ」という設定で本来危険のない「夢の中に入る」ことも、むしろ緊迫感を作ることに利用するうまさはさすが。

 多層構造世界になる理屈は、「夢の中の夢の世界」「夢の中の夢の中の夢の世界」……という風に、『段階』が徐々に深くなる夢に潜り込むほど、夢の持ち主の潜在意識の深いところにアクセスできる、という設定だから。
 そして段階が深くなればなるだけ、時間の経過がゆっくりになる。現実では数秒の出来事が、「夢」の中では数分、「夢の中の夢」の中では数時間、「夢の中の夢の中の夢」の世界では数日……というように。
 この多層構造世界を上手く見せている具体的な手法としては、主人公が一段深い「夢」に立ち入る時に、今までいた世界で背景が変わらないようにしていること。
 現実世界は「飛行中の旅客機のファーストクラス席」、一層目の夢では「都会を走る車の中」、二層目の夢では「ホテル」、三層目の夢では「雪山の、要塞のような病院」という風に、その層の世界に画面が切り替わった瞬間に、観客に何層目か理解できる絵になっている点。

 ややこしいのは、各階層ごとに「夢」の持ち主が違うということ。
 夢の持ち主は、他のメンバーが深い階層の夢に下りる時に、元の夢の世界に残って「他のメンバーを目覚めさせる」役割を負います。

 ここまでわかってしまえば、あとは各階層の違ったタイムスケールで行われている緊迫感のあるアクションをそれぞれに観ながら、それらがラストの「目覚め」の瞬間に向けて収束していくさまを、手に汗握って楽しむことができるように作られているのです。

 すべてが計算され尽くした見事な作品でした。
 個人的には、その「計算」を見抜けないとなかなか楽しむところまで行けないところが残念でした。
 どちらかというと、私は「計算を見抜かせないで楽しませて欲しい」タイプですので。(でも小説家として自分の作品に生かすために、常に「計算を見抜く」努力は怠らないというこの矛盾(笑))

 製作側が提示する世界観のルールを掴みつつ、計算を見抜きつつ、それでも作品を楽しめる人にはおすすめ。けっこうハードル高いな、これ。

 で、押井守作品の影響はたしかに少なからずあると思いますが、そんないちいち名前を出すほどでもないかと、というか「現実感のなさの質が違う」という印象。押井作品の現実感のなさは画面作りからくるもので、多くの場合描かれているのは紛れもない(その作品の中での)現実だったりするわけですが、『インセプション』の場合は描かれているのが夢の世界でも画面作りに関してはかなりリアル志向ですから、表現手法としては裏返しというか正反対の方向を向いているんじゃないでしょうか。
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| 映画&海外ドラマ | 05:32 AM | comments (0) | trackback (x) |

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