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都築由浩
SFやらミステリやらホラーやらをライトノベルジャンルで書いている作家。
コミック原作・編集デザインなどその他さまざまな職業を兼業する。
クルマ・R/Cカー・自転車・ホビーロボットなど多趣味で、それらの道具や仕事の資料が散らばる自室が常にゴミ箱のような様相を呈していることから、巻末に『9畳のゴミ箱より』と記する。
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2008(C) Yoshihiro Tsuduki
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個々の文章の「意図」
 twitterで以下のようなつぶやきをしたところ、えらい反響がありましたので、詳細を解説します。

ーーーーーーーーーーーーーーーーここからーーーーーーーーーーーーーーーー
プロ小説家じゃない人の小説を添削していると、つくづくプロの文章は一文ごとにちゃんと意図があって書かれているなあと思う。文法が正しくても、意図のない文章は意味が掴みづらくて結果として小説全体をものすごく読みにくいものにしてしまう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーここまでーーーーーーーーーーーーーーーー

 このツイートの元になった文章は、アマチュアだけど自費出版で本を出す人で、自費出版といえどもちゃんと読める物にしたいので、添削しているわけです。これやらないで読みもせずに「すばらしい作品だから是非自費出版しましょう」とか勧めちゃうと悪徳業者ですけど、そういうやり方はしたくないので。

 ちなみにものすごく初歩的な話です。あんまり期待しないで下さい。
 というわけでここから先は、小説家志望だけど一次選考をなかなか通らないとか、一次と二次を行ったり来たりという人のための内容です。作例として引用しているのはわたしが同人誌で発表したショートショート作品の一部です。

 まずは非常に初歩的な話から。わかりきっていることだと思いますが、少々お付き合い下さい。
 僕が教習所に通い始めた頃に、亮兄ちゃんが言った。
 亮兄ちゃんが教習所に通い始めた頃に、僕が言った。
 この二つの文章は、使っている語はまったく同じですが、意味はまるで変わっています。
 どうしてこのようなことが起こるかというと、一文に二つの要素があり、それぞれの要素の主語が入れ替わっているからです。
 結果として、このあとに(あるいは前に)くるセリフの主が違っています。
 もちろん、ここで問題にしたいのはこんな極端な話ではありません。サンプルを変えましょう。これは、同じ作品の最初の一行です。
 亮兄ちゃんとけんかをしたのは、ほんの些細なことがきっかけだった。
 ほんの些細なことがきっかけで、亮兄ちゃんとけんかをした。
 この文章はやはり二つの構成要素を持っていて、今度はその要素全体の順序を入れ替えてみました。これなら、文章の意味は変わりません。
 しかしこの二つの文章、実は「意図」は違っています。文章の流れは下のとおり。
前者:「亮兄ちゃんとけんかをした」→「きっかけは些細なことだった」
後者:「きっかけは些細なことだった」→「亮兄ちゃんとけんかをした」
 特にこの場合小説の最初の一行と言うこともあり、読者の意識の流れは文章の流れに沿います。わたしがつぶやいた「文章の意図」というのはいろいろありますが、この場合は「読者の意識の流れをコントロールする」のが意図になります。
 つまり、この後に続く文章に向かって、読者の意識をうまく流してあげることを考えて、前者と後者のどちらの文章がいいのかを考えます。
 後に続く文章が「けんかの内容」についてなのか、「きっかけ」についてなのかによって、どちらを最初の一行とするかが変わってくる、ということです。
 もちろん、最終的には作中で「けんかの内容」にも「きっかけ」にも触れるわけですが、単に順番としてどちらが先に来るか。直後に来る要素に向かって読者の意識を誘導するわけですね。

 実際にはこの作品の冒頭部は以下のようになっています。
 亮兄ちゃんとけんかをしたのは、ほんの些細なことがきっかけだった。
 亮兄ちゃんとは、血のつながった兄弟じゃない。ていうか、そもそもどんな意味でも兄弟ではないんだ。亮兄ちゃんは、中学生の頃家に遊びに来ていた姉ちゃんのクラスメイトで、なぜだか二つ離れた僕と気があって仲良くなったんだ。
 姉ちゃんが県外の私立高校に入って一人暮らしを始めて二年。未だに僕たちは一緒になって遊んでいた。
 僕は足立努。この春高校に入ったばかりの十六歳。その十六歳になったばかりの二ヶ月前、僕はバイクの免許を取った。
 実際のけんかの中身とは別に、そもそもそのバイクの免許が亮兄ちゃんとのけんかのもともとの理由だったのかもしれない。
 僕が教習所に通い始めた頃に、亮兄ちゃんが言った。
「バイクなんてあぶないよ。やめたほうがいい」
 この文章のつながりの「意図」を、簡単に解説しましょう。
 まず先ほど例に挙げた「最初の一行」があります。
 その後、上の説明だと「きっかけ」にあたる文章が来るはずですが、ここではキャラクターの紹介が入っています。
 これは、読者の興味を引くために、小説の最初の一行に「けんか」という要素を入れたかったために、こういう順序になっています。ここで登場した「亮兄ちゃん」を紹介し、現在の状況を説明し、それから語り手を紹介する。その部分の最後が、つぎの一文です。
 僕は足立努。この春高校に入ったばかりの十六歳。その十六歳になったばかりの二ヶ月前、僕はバイクの免許を取った。
 赤色文字の部分が「きっかけ」ですね。
 その後、特に説明もなく「けんかの中身」の話に移行していますが、最初の一行で意識を「きっかけ」に誘導してあるので、読者にはなんとなく「これがきっかけなんだろうな」とつかめるようになっています。少なくともそう意図しています。

 では次に、極端に悪い例を見てみましょう。こちらの作例は、同じ作品の一部を「悪い例」として書き替えたものです。赤色文字が書き替え部分。
 亮兄ちゃんは高校で生徒会長をやるくらいの秀才だけど、姉ちゃんも私立に行くくらい頭が良かった。だから、亮ちゃんの言うことはいつも正しい。この時もそうだった。僕にだってそのくらいのことはわかっていた。
 ここでは「亮兄ちゃんは頭がいい」→「姉ちゃんは頭がいい」という風に読者の意識が流れているのに、次の文章が「亮兄ちゃん」の話題になっているために、意識の流れが遮られてしまいます。もちろん、本来の文章は下のようになります。
 姉ちゃんも私立に行くくらい頭が良かったけど、亮兄ちゃんは高校で生徒会長をやるくらいの秀才だ。だから、亮ちゃんの言うことはいつも正しい。この時もそうだった。僕にだってそのくらいのことはわかっていた。

 文章一つ一つが文法的に正しくても、作者が意図的に読者の意識や視点の流れをコントロールしないと、文章の意味が掴みづらく、全体としてものすごく読みにくくなる、という意味がわかっていただけたでしょうか。
「なんだ、こんなことか。そんなことはわかってるよ」と思われたでしょうが、先に書いたようにこれは「極端に悪い例」です。一次選考に通らない小説には、こうした「文法としてはあってるけれど、意識の誘導ができていないために、全体として何が言いたいのかわからない」ものが多く含まれます。書き上げた直後に自分の作品を客観的に読むのはなかなか難しいことなので、早計に「自分には関係ない」と思わない方がいいでしょう。(逆に「二次選考は普通に通る。最終選考に残ったこともある」人なら、この程度のことは自然にできている可能性が高いです)
 これを避ける方法は、二つあります。
・書き上げてから半月くらいはその原稿は一切読み返さずに、プロが書いた小説をいっぱい読んで、それから書いた原稿を読み返す。
・自分の作品をちゃんとけなしてくれそうな(おべんちゃらで褒めたりしない)、小説好きの友人に読んでもらう。
 どちらかを実行されることを、強くおすすめします。

 ここでは「読者の意識の流れをコントロールする」という意図だけを紹介しましたが、文章の意図というのは他にもいろいろあります。「演出上文章に含まれる要素のどれかを強調したい」とか、あるいは「伏線として書いておきたいけど読者に悟られないよう目立たせたくない」とか。同じ小説を何度か読み返すことで、一つ一つの文章に込められた作者の意図が見えてくることがありますので、お気に入りの作品で一度試してみて下さい。
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| お仕事(教職) | 12:00 PM | comments (0) | trackback (x) |

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