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都築由浩
SFやらミステリやらホラーやらをライトノベルジャンルで書いている作家。
コミック原作・編集デザインなどその他さまざまな職業を兼業する。
クルマ・R/Cカー・自転車・ホビーロボットなど多趣味で、それらの道具や仕事の資料が散らばる自室が常にゴミ箱のような様相を呈していることから、巻末に『9畳のゴミ箱より』と記する。
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2008(C) Yoshihiro Tsuduki
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セカイカメラの世界
 iPhoneアプリとしてかなり以前から話題になり、つい先日やっとリリースされたセカイカメラ。エアタグと呼ばれるテキスト/画像/音声をGPS座標にヒモ付けてクラウドのサーバーに保存し、アプリケーションを起動したiPhoneを通して風景を見ることで、iPhoneカメラが映した実際の風景にそれらの情報を載せて表示する。
 アニメファンにとっては電脳コイルの『電脳メガネ』のようなもの、といえば通じる。一般には『拡張現実』というなんだか説明の難しいアプリケーション。
 ネット上にあるわかりやすい説明というと、ここの記事になるでしょうか。
 ただ、上の記事は少し真面目に過ぎるかな、という気はしています。

 iTunesStoreで無料でダウンロードできるようになってから数日おいて、私もダウンロード……iPhoneにインストールして、これまで10日間ほど意識して使ってきました。
 その間、 秋葉原では『エアタグテロ』とまで呼ばれるほどの騒ぎが起こっていたわけですが、

大阪では利用者が少ないこともあってか、下画像のように『ランドマーク』と呼ばれる目立つビルや商店のエアタグしか見かけませんでした。


 私の自宅の最寄り駅である近鉄布施駅近辺で、近くにセカイカメラユーザーがいるかどうかの『テスト』タグを発見。画像には映っていませんが、私もレスを付けてあります。

 大阪市内、オフィス街の本町近辺では『風邪気味』というエアタグを発見。『お大事に』とレスを付けておいたら、数日後にこんなレスが返ってきました。GPS信号……すなわち場所に縛られたタグでは、「同じ場所にいるけれどまったく知らない、接点もない」同士がコミュニケーションできるという実例。


 私がセカイカメラをインストールしてから数日はこんな感じで、いわゆる数の勝負はまったくできなかったのですが、この後、展開はまったく違ったものになってきます。
 数日たって、京都精華大学の講義の日。
 もう習慣のようになっていたので、叡電出町柳でセカイカメラを起動したら、結構な数のエアタグが浮かんでいて、この時点で「エアタグ多すぎ、うっとうしい」と思うようになってランドマーク(目立つビルや商店を示す常設のエアタグ)をフィルターで非表示に設定した。見たいのはユーザーがつけたエアタグだから。

 叡電に乗っている間、駅ごとに周辺のお店の店先を映したと思しき画像のエアタグがあって、テキストコメントの形で「このメニューがおいしい」とか付けられていて、
(正統派で実用的なエアタグの使い方だなぁ)と思っていたりもしたのですが、さて、大学に入ってみると。

 上画像のような状態。これは、密集したエアタグを選択しやすくするために渦巻き状に回転するアニメーション表示の途中をスナップショットした物ですが、こんな調子で「そのにいる人の顔」「その時感じたことのテキスト」などのエアタグが入り乱れて表示されています。
 画像の顔部分はモザイクにしてありますが、数人知り合いの顔があって、それはその建物に入っている部署の大学職員さんの顔でした。


 その翌日。こちらの画像は大阪市中心部を南北に走る大通り御堂筋の、若者が集まるアメリカ村近辺で撮影した物。ものすごい数のエアタグ。テキストよりも画像が多い印象があります。
 ミナミと呼ばれるこの辺り一帯こんな状態で、お店の店頭を映した画像や、『待ち合わせ中。早く来い』『歩きすぎた。足痛い』というテキストなど、いろいろあって面白い。

 下の画像は、翌週の京都精華大学へ行く途中の出町柳駅で見かけたエアタグのテキストとレス。ボケとツッコミになってるところが面白くてスナップショット。



 このように、全体的に若者が集まる街で様々なエアタグを見ることが出来る印象を抱きました。
 インターネットは時間も空間も関係のないコミュニケーションツールという一面を持っているけれど、セカイカメラは時間(デフォルト設定では一週間以内に設置されたエアタグしか表示されない)と場所(GPS座標にヒモ付けられているので、一度はその場所に行かないと表示されない)とに縛られたコミュニケーションツールとして機能しそうという気がする。
 もちろん、twitter的にその日その場で感じたことをただエアタグをして置いておくこともできるけれど、3枚目の画像のように「同じ場所にいる」というだけで顔も名前も知らない同士が、直接顔を合わせないままでコミュニケーションをとることができるツールは、これまで無かったように思います。
 鍵になるのは、人口密度。
 おそらく過疎地ではセカイカメラの何が面白いのかさっぱりわからないだろう。人口密集度の高い場所、セカイカメラ所有者が多い場所であればあるほど、この楽しさを享受できる。
 もう一つは、ユーザーが飽きずに使い続けること。それには、ある程度エアタグを付けることが習慣になってる人が出てくるまで、できるだけ他人のエアタグにレスを付けるようにすることが必要だと思う。 (東京/秋葉原くらい密集度が高ければその必要はなさそうだけど)
 コメントがまったく付かないエアタグを付け続けるのは、それなりに努力を要するものだからだ。
 お店を紹介するエアタグだったら「おいしかった。教えてくれてありがとう」とか、そういう挨拶だけでいいから、当分の間気をつけてコメントを付けるようにしようと思う。
 将来的にはこれがなんらかのエンターテインメントとして遊べるようになるだろう。エンターテインメント(映画や小説、マンガ)の世界の中でエアタグがネタや小道具として使われるようになるには、それほど時間がかからないはず。
 逆に、何らかの方法で悪用されることもあるかもしれない。
 そんないろんなことを妄想させてくれるソフトです。

 もう一点。エンターテインメント方向だけならばまだしも、これがなにか実用的なツールとして使われるようになったとき、セカイカメラを持っているかどうかがある種のデジタルデバイドを生むかもしれない……という危惧を抱くほどに、これは世界を変革するツールたり得るソフトだと思ったのでした。
| https://blog.tsuduki.com/index.php?e=176 |
| その他 | 01:37 AM | comments (0) | trackback (x) |

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