2010,07,10, Saturday
有明の東京ビッグサイト西館で開催中の「東京国際ブックフェア」に行ってきました。
目的はもちろん併催の「デジタルパブリッシングフェア」に多数出展されている電子書籍。 作家としての興味はもちろん、編集者として、あるいは京都精華大などで教えている生徒たちに解説するための勉強として、です。 このイベントは数年前に一度来たことがあるのですが、そのころにはまだ電子書籍はとても一般性があるとは言えない状況でしたから、どんな違いがあるのか観ておきたかったというのもあります。 iPadなどでマスコミがこぞって電子書籍に注目していることもあり、会場はとんでもない大盛況でした。 あらかじめ予習していた通りですが、現在の(計画中を含む)電子書籍は配信方法で2種類、ファイル形式で2種類に大別できます。 配信方法ではクラウド型とダウンロード型。データ型式ではpdf型とxml型です。 iPad/iPhoneに関してはダウンロード型がさらにドキュメント型と単独アプリ型に分けられます。 特別なアプリケーションを使わずにWebブラウザでストリーミングされたデータを見る物から、単独のアプリとして扱われる物まで各社様々。 制作にかかる手間、コスト、ユーザーの利便性、著作権保護…様様な視点からそれぞれ一長一短があって「コレ!」という決定打がない感じ。 クラウド上にデータをおいて逐次ストリーミングしながら見る型式は、DRM(著作権保護)の観点からは都合が良いけれど、読者の「所有したい」という欲求には応えきれないし、なによりネットワークに繋がらない環境化では読むことすらできません。 逆に一括でダウンロードして保存できる型式では、DRMの問題が出てきて、著者によっては自作が大量に違法コピーされるかもしれないという不信感を拭い去れないでしょう。 ファイル型式の面では、xml型の国際規格でありAppleが標準アプリiBooksで採用したePub形式が今のところ縦書きや日本語特有の文字詰めに対応できていないこともあって、数的にはpdfやページ毎に画像データとして保存する型式の方が多かったようです。 しかし、小説などのテキスト中心の作品では、これは極端にデータ量が多くなってしまい、同時に「文字列で検索できない」という不便もあります。 ドットブック型式などePubを独自に拡張し日本語に対応させた型式もありますが、国際標準とは言い難く、ブラウザが限られてしまうという欠点があります。 大まかな短所長所はこんな感じで、それぞれの型式の短所を埋めるべく、各社それぞれの配信方法や規格が乱立している。という印象でした。 合言葉は「シングルソース、マルチユース」。つまり編集作業は一つの形式で行って、それを多数の規格のデータ形式に変換して配信できる。という制作側のメリットを強調した言葉。 それから何度か出ているDRM。コピーガードの技術。これもどちらかといえば配信側、それも著者個人が配信する場合よりは出版社のような業者を買いして配信する場合の配信業者の立場から見たもの。 どちらも業者相手の商売を考えているのは、個人よりも金額が大きい商売が出来るからでしょうねえ。 それに対して「電子出版のYouTubeを目指しています」とおっしゃったMixPaperさんが、特に学生にもすすめられるかもしれない媒体として印象に残りました。 数は少ないですが、本をスキャンすることに特化したスキャナや、印刷用フィルム(DTPが中心になる以前に使われていた印刷用ポジフィルム)に特化したスキャナなども展示されていて、既存のコンテンツを電子化する面でもいろいろ研究が進んでいました。 会場時間の10時に入場して、夕方4時半頃まで、東館で開催されている文房具の見本市と一緒に丸一日見て回れるイベントでした。すごい疲れたけど。 |
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