新年早々、Amazonから届いた本。資料本として購入したのですが、実に面白くてここで紹介したくなりました。
この本についての興味は、比較神話学的な側面からくるものでした。
『アマテラスーツクヨミースサノオ』に代表され、日本の神話に散見される「三柱セットの神の中位に『ほとんど事績のない神』が存在する」というパターンについて考察された書物と言うことで、おそらく本書で解説を書かれている吉田敦彦氏の著書のどこかで目にしたことがあったのでした。
その本が1999年に文庫になっていたことを知ったのが、昨年末。(ひどい話だけど、書名を知った頃にはインターネット書店なんて物はなく、そんな立派な本は古本屋で偶然にでも出会わない限りすぐには手に入らないだろうと思い込んでいた)すぐに発注して、1月の2日に届いたというもの。
著者の河合隼雄氏は臨床心理療法士であったことすら、この本ではじめて知りました。(『市井の神話研究家』として紹介されていたから)
ところがこの本、読んでみると実に面白い。ので、ある種のネタバレを含みつつ『続き▽』の下に紹介します。
上に書いた『日本神話の中空構造』については、古事記を読んでれば誰でも「ああ、あれのことね」と腑に落ちる構造なので、実に簡単に、あっさりと第1章第2項『『古事記』神話における中空構造』で紹介されています。
ここからが圧巻。
筆者は、そもそも神話や伝説・昔話の研究をはじめた動機として「西洋で発達した心理療法が、日本で通用しないことがある」理由として、人々が一般的に持つ精神的な基盤の違いを挙げ、それが「民族に伝わる神話や伝説・昔話に起因する」というところへと発展させていきます。
これが、実に読みやすく面白く、いちいち腑に落ちてくるのでやめられない。
取り上げられているのも民話や昔話だけでなく、マンガ、アニメーションと多岐にわたり、恐ろしいことに単なる資料本としてではなく創作の手助けにまでなってくれそうな内容。
本書は1982年に初版が出版されたものですが、すでに現在の社会情勢と同じ事(「家庭崩壊」「凶悪犯罪の低年齢化」「教育の崩壊」など)が書かれており、これらの社会的な病ともいうべき事柄への対策がいかに(即効性を狙うあまりにかえって)後手後手に回っているかということも感じさせます。
良書です。
心理療法の本としてではなく、もちろん神話学の本としてでもなく、クリエイターの心得の一つとして読んでおいていただきたい。
即効性は、ないでしょうけれど(笑)
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| 08:31 AM |
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